がん治療中は、身体的な負担だけでなく、精神的なストレスや生活環境の変化など、さまざまな要因によって「食欲がわかない」「何を食べても美味しく感じられない」といった悩みを抱える方が多くいらっしゃいます。

特に抗がん剤や放射線治療の副作用として、吐き気・味覚障害・口内炎・唾液分泌低下などが現れることもあり、「食べること」が大きなハードルになりがちです。

しかし、「しっかり食べて体力をつけなくては」と思えば思うほどプレッシャーになり、余計に食事への意欲が失われてしまうこともあります。

今回は、本サービスが所有する専門家によるチェック済みの知識体系に基づいて、「闘病中で食欲がない時」の具体的な食事の工夫や考え方についてご紹介します。

1. 無理せず、自分に合ったペースで

まず大切なのは、「無理してたくさん食べよう」と自分を追い込まないことです。

医師から特別な指示(例えば塩分制限や糖質制限など)が出ていない場合は、その日の体調やお腹の具合に合わせて「今ならこれなら口にできそう」というものから始めましょう。

「今日はプリンしか喉を通らなかった」「果物だけだった」――それでも構いません。

毎日同じ量・同じ内容を目指す必要はありません。「昨日より少しでも口にできた」「今日は水分だけでも摂れた」そんな小さな積み重ねこそ大切です。

2. 食べやすさアップ!具体的な工夫ポイント

酸味・冷たい料理・香り控えめメニュー

抗がん剤治療中などで特に「匂い」に敏感になっている場合は、温かい料理よりも冷ました料理や冷たいメニューがおすすめです。

また、酢の物や果物(オレンジ・グレープフルーツなど)、すし飯など酸味のあるものは比較的さっぱりしていて喉越しも良く、多くの方から「これなら少し食べられた」という声があります。

汁気の多いもの

放射線治療後で唾液量が減っている場合や朝起き抜けには、ご飯よりもスープ類、お茶漬け、お粥など汁気たっぷりのお料理だと飲み込みやすくなります。

具沢山スープなら栄養バランスも整いやすく、一品で満足感も得られます。

小分け&間食スタイル

一度にたくさん食べる必要はありません。

3回の主食+副菜という従来型ではなく、小さいおにぎり、お菓子類(カステラ・ゼリー)、ヨーグルト、プリンなど手軽につまめるものを用意しておき、「小腹が空いたタイミング」で少しずつ摂取する方法がおすすめです。

1日5~6回くらい細かく分けてもOKです。

エネルギー密度アップ

体重減少や筋力低下予防には、「少量でも高エネルギー」を意識しましょう。

バター、ごま油、オリーブオイル等油脂類を使った調理法(炒め物・和え物)や、ご飯にはふりかけ・佃煮・卵黄醤油漬け等プラスαのおかずを添えるとよいでしょう。

また蜂蜜やジャム、生クリーム入りデザート等甘味料もうまく活用できます。

ただし消化器症状(下痢傾向等)が強い場合は様子を見ながら調整してください。

3. 水分補給も忘れずに

固形物ばかり意識していると、水分摂取がおろそかになることがあります。

しかし脱水状態になるとさらに倦怠感や不快感につながりますので、水、お茶、スポーツドリンク、ジュース類など飲みたいものからこまめに補給しましょう。

氷片を舐めたりゼリー飲料タイプもおすすめです。

4. 「休む勇気」も大切

どうしてもしんどい日、「何ひとつ口にしたくない…」という時期もあるでしょう。

そのような日は無理せず休養優先で構いません。「また明日頑張ればいい」と割り切って、自分自身へのプレッシャーを減らしてください。

一時的な絶食状態でも数日程度なら問題ありません。ただし長期間続いたり急激な体重減少の場合は必ず医師へ相談しましょう。

5. 気持ち転換&サポート活用

外出できる体調の日には外食したり、お弁当屋さんのお惣菜コーナー、新しいデザート探し等「選ぶ楽しみ」を取り入れてみても良いでしょう。

また病院には管理栄養士による個別相談窓口がありますので、不安点や困ったことは遠慮せず相談してください。

「こんなの試していい?」「市販品だとどれがおすすめ?」等具体的質問にも丁寧に答えてくれます。

6. 家族・周囲とのコミュニケーション

家族としてサポートする側の場合、「何とか元気になってほしい」と思うあまり無理強いや励まし過ぎになってしまうケースがあります。

「今日はこれしか無理だった」「今はこういうものしか受け付けない」と本人から伝えてもらうことで理解されやすくなるため、自身の状態について率直に話すことも大切です。


まとめ

闘病中で思うように「食べられない」自分自身へ焦燥感や罪悪感を抱いてしまう方も多いですが、それぞれの日々、その時その時でできる範囲で十分です。

「好きだったあのお菓子」「この果物だけはいくらでも…」そんな“今”心地よく感じるものから始めてください。

そして困った時、不安になった時には必ず医療スタッフへ相談しましょう。

一人ひとり違う“あなた”だからこそ、その人その人への寄り添ったアドバイスがあります。

不安定な毎日の中にも、小さなしあわせ時間=“美味しい”瞬間がありますよう願っています。


※本記事内容は本サービス所有の専門家監修情報および一般論にも基づいています。

個別事情によって最適解は異なるため、ご不安点あれば主治医または管理栄養士へご相談ください。