### がん患者さんのこころの変化 ~見過ごされがちなPTSDとその対処法~

がん診断や抗がん剤治療(がん細胞の増殖を抑える薬物を使った治療)の過程で、身体だけでなく心にも大きな変化が起きることがあります。

私はアピアランスケアの専門家として、多くの患者さんの外見の変化をサポートする中で、心の変化にも寄り添ってきました。

特に気になるのが、がんによるPTSD(心的外傷後ストレス障害)です。

これは「恐ろしい出来事を体験した後に起こる精神的な反応」のことで、がん患者さんの約25%が経験するといわれています。

でも、なかなか話題にならず、見過ごされがちなんです。

### 「これって普通のこと?」PTSDの見逃しやすい症状

抗がん剤治療中や治療後に、「病院に行くだけで動悸がする」「検査の話を聞くと急に不安になる」といった経験はありませんか?

これらはPTSDの症状かもしれません。

また、「治療のことを思い出したくない」「がんの話題を避ける」という回避行動や、「些細なことでイライラする」「集中できない」といった過覚醒状態も特徴的です。

夜、治療中の記憶が急によみがえって眠れなくなることもあります。

こうした反応は「弱い心の表れ」ではなく、強いストレスに対する自然な反応です。

ご家族の方も、こうした変化に気づいてあげることが大切です。

「最近、どんな気持ち?」と優しく尋ねてみるだけでも、大きな支えになりますよ。

### 「自分でできること」心を守るセルフケアと周囲のサポート

私が患者さんに勧めているのは、まず「自分の感情を認める」ことです。

「怖い」「つらい」と感じることは当然のことです。無理に「前向きに」と自分を追い込まず、時には「今日はしんどいな」と認めてあげてください。

そして、信頼できる人に気持ちを話すことで、心の負担が軽くなることがあります。

リラクゼーション法も効果的です。深呼吸や軽いストレッチ、お気に入りの音楽を聴くことなど、自分なりのリラックス方法を見つけてみませんか?

また、治療の合間に小さな楽しみを計画することで、前向きな気持ちが生まれることもあります。

お気に入りのカフェでのひととき、好きな本を読む時間など、ご自身へのちょっとしたご褒美を大切にしてくださいね。

アピアランスケア(がん治療による外見変化へのケア)も心のケアに役立ちます。

脱毛などの外見変化への対処法を知ることで「自分でコントロールできる部分がある」という安心感が生まれます。

医療用ウィッグの選び方や、眉毛がなくなったときのメイクテクニックなど、お気軽にご相談ください。

### 「一人じゃないよ」専門的な支援を受ける選択肢

自分だけで抱え込まずに、専門家のサポートを受けることも大切な選択肢です。

多くの病院には「がん相談支援センター」があり、心理的なサポートも受けられます。

「相談するほどではない」と躊躇される方も多いのですが、小さな不安も遠慮なく話せる場所です。

必要に応じて心療内科や精神科の受診も検討してみてください。

また、患者会やオンラインコミュニティで同じ経験をした方々と交流することで、「自分だけじゃない」という安心感を得られることもあります。

「誰も私の気持ちをわかってくれない」と感じる時こそ、同じ経験をした仲間の言葉が心に響くものです。

ご家族の方々へ:患者さんの変化に戸惑うことがあるかもしれませんが、あなた自身のケアも忘れないでください。

介護者の疲れやストレスも自然なものです。時にはご自身の時間を大切にし、必要なら周囲に助けを求めることも大切です。

抗がん剤治療は身体だけでなく心にも影響します。外見の変化に対するアピアランスケアと同じように、心のケアも大切にしていただきたいと思います。

皆さんのペースで、無理なく進んでいきましょう。いつでもそばにいる人がいることを忘れないでくださいね。