がん治療を受ける多くの方が、身体的な症状や副作用だけでなく、「外見(アピアランス)」の変化にも悩みや不安を抱えています。

抗がん剤による脱毛、放射線治療による皮膚トラブル、手術による傷あとや体型の変化…。

これらは単なる“見た目”の問題にとどまらず、そのず人の心や社会生活にも大きな影響を及ぼします。

そんな時に力になってくれるのが「アピアランスケア」です。

本記事では、専門家によるチェック済み知識体系に基づき、「アピアランスケア」とは何か、その具体的な内容や活用方法について詳しくご紹介します。


アピアランスケアとは?

「アピアランスケア」とは、がんやその治療によって生じた外見上の変化に対して、その人自身が少しでも快適に、自分らしく日常生活を送れるよう支援する取り組みです。

英語で“appearance care”=「外見への配慮・支援」を意味します。

例えば――

  • 抗がん剤治療で髪や眉毛・まつげなど体毛が抜けてしまった
  • 放射線照射部位の皮膚が赤くなったり黒ずんだりした
  • 手術痕や乳房切除後など体型・ボディイメージに大きな変化があった
  • 爪が黒ずむ・割れやすいなど細かな部分も気になる

こうした変化は、ご本人だけでなく周囲との関係性にも影響し、「人前に出づらい」「病気だと知られたくない」「自信を失う」など精神的ストレスにつながります。

実際、多くの患者さんから「髪を失ったことで一番落ち込んだ」「爪や肌荒れで仕事中も隠すことばかり考えてしまう」という声も聞かれます。


なぜ今、注目されている?

近年、日本全国400以上ある「がん診療連携拠点病院」では、“心身両面から患者さんを支える”という理念のもと、「相談支援センター」内に専任スタッフ(看護師・管理栄養士・臨床心理士等)による『アピアランスケアイベント』や『個別相談』、『ウィッグ試着会』『メイク講座』など様々なサービス提供が広まりつつあります。

背景には、

  • がん治療成績向上=長期生存者増加→社会復帰/就労継続ニーズ拡大
  • SNS等情報発信ツール普及→外見への意識高まり
  • 患者さん自身だけでなく家族・パートナー等周囲への配慮

こうした流れがあります。「病気になっても自分らしくありたい」「社会とのつながりを保ちたい」という思いは誰しも同じ。

そのため医療現場でも積極的なサポート体制整備が進められているのです。


具体的にはどんなこと?

1. ウィッグ(医療用かつら)・帽子選び
脱毛時期にはウィッグ購入費助成制度(自治体独自)が利用できる場合もあります。

専門スタッフと一緒に試着し、自分に合うものを探せます。帽子コーディネート相談も人気です。

2. メイクアップ指導
眉毛・まつげ脱落時でも自然な印象になる描き方、肌色補正テクニック、敏感肌向け低刺激コスメ選びなど、一人ひとりのお悩みに合わせてレクチャーしてくれます。

男性患者さん向けメイク講座も増えています。

3. ネイル&ハンドケア
爪トラブル対策としてマニキュア活用法、市販品選び方、安全なお手入れ方法まで丁寧に教えてくれるので安心です。

4. 傷あとカバー/ボディイメージサポート
手術痕用シリコン術シート紹介、下着選び相談(乳房再建後含む)、義乳フィッティングサービス等があります。

また心理面サポートとして臨床心理士との面談機会も設けています。


どこで受けられる?どう相談する?

まずは主治医または看護師へ「外見について困っている」と伝えてください。その後、

  • 病院内「がん相談支援センター」
  • 専門クリニック併設サロン
  • 地域包括支援センター 等

で予約制個別相談またはイベント参加案内があります。ご家族のみでも利用可能です。

「こんなこと聞いていい?」と思わず、小さなお悩みでも遠慮なくご相談ください。


アピアランスケアQ&A

Q:費用負担は?
A:ウィッグ購入助成金制度(一部自治体)、無料メイク講座開催例あり。ただし内容によって自己負担の場合もあるので事前確認がおすすめです。

Q:男性/高齢者/子どもでも対象?
A:もちろんOK!性別年齢問わず、“外見変化”で困った全ての方対象です。「自分だけ…」と思わずぜひご活用ください。

Q:いつから始めればいい?
A:「脱毛前から準備したい」「退院後ゆっくり考えたい」などタイミング自由です。不安になったその時点で早めに情報収集すると安心につながります。


最後に~あなたらしい毎日のために~

“病気になって初めて、自分の日常生活や好きだったファッション、おしゃれ心…それぞれ大切だったことに気付いた”“鏡を見るたび落ち込む日々。

でも少し工夫することで笑顔になれる瞬間もあった”。これは多くの患者さんから寄せられるリアルな声です。

誰かと比べたり無理して頑張る必要はありません。

「今日はこの帽子なら出掛けてもいいかな」「このリップカラーなら元気そうと言われた」。

そんな小さなしあわせ時間こそ“あなた自身”の日常なのです。そして困った時、不安になった時には必ず医療スタッフへ頼ってください。

一人ひとり違う“あなた”だからこそ、その人その人への寄り添いがあります。

“自分らしい毎日”のお手伝い、それこそが本当の意味での『治療』だと私たちは考えています。


※本記事内容は専門家監修情報および一般論にも基づいています。個別事情によって最適解は異なるため、ご不安点あれば主治医または各種窓口へご相談ください。