抗がん剤治療を受けていると、髪や皮膚だけでなく「爪」にもさまざまな変化やトラブルが現れることがあります。

普段はあまり意識しない指先ですが、いざ不調になると日常生活のちょっとした動作にも支障をきたし、不安やストレスにつながりやすいものです。

「爪が黒ずんできた」「割れやすくなった」「痛みや腫れが出てきた」

――そんな悩みを抱える方へ、一般的な対策例をもとに、「抗がん剤中の爪トラブル」の原因・症状・セルフケアについて詳しくご紹介します。


1. 抗がん剤治療中に起こる主な爪トラブル

抗がん剤は、細胞分裂の盛んな組織(毛根・粘膜・骨髄など)に影響しやすい薬です。

実は「爪」もそのひとつ。特にタキサン系(パクリタキセル、ドセタキセル等)、一部の分子標的薬などで副作用として現れやすい傾向があります。

よく見られる症状例

  • 爪の色素沈着(黒ずみ・茶色っぽくなる)
  • 爪表面の凹凸・筋
  • 割れやすさ、欠けやすさ
  • 爪周囲の炎症(赤み・腫れ・痛み=爪囲炎)
  • 爪下出血、小さな内出血斑点
  • 爪甲剥離(爪と指先との間に隙間/浮いてくる)
  • 膿など感染兆候

これらは治療開始から数週間~数ヶ月で徐々に現れることが多いですが、個人差も大きいため「自分だけ?」と心配せず気軽に医師・看護師へ相談してください。


2. なぜ起こる? メカニズムを知ろう

爪は皮膚同様“生きている組織”であり、根元部分(爪母基)が活発に細胞分裂しています。

抗がん剤はこの部分にもダメージを与え、新しい健康な細胞産生を妨げます。その結果、

  • 色素沈着→メラニン生成異常
  • 割れ/欠け→構造脆弱化
  • 炎症→バリア機能低下+外部刺激増加
    …という形で様々なトラブルとなって現れるわけです。

また免疫力低下時には小さな傷からでも菌感染しやすくなるため、「いつもより慎重なお手入れ」が必要になります。


3. 日常生活でできる予防&セルフケア

【A】保湿ケア徹底!

乾燥するとさらに割れやすくなるため、ハンドクリーム+ネイルオイル等でこまめな保湿習慣を持ちましょう。

特に水仕事後、お風呂上りには忘れず塗布してください。

【B】刺激&衝撃回避!

洗濯物干し/缶開け/段ボール開封など“引っかかり”動作では要注意。ゴム手袋利用、市販指サック活用もおすすめです。

また深爪せずヤスリ仕上げで整えることで二次損傷予防になります。

【C】清潔保持!

傷口から感染しやすいため、手洗いや消毒も大切です。特に外出後/調理前後には念入りに行いましょう。もし腫れ・膿など異常感じた場合は早め受診!

【D】テーピング等物理的保護!

割れてしまった場合にはテープ固定、市販補修シート利用等で悪化防止できます。長時間水濡れする場面では絆創膏併用も有効です。

【E】マニキュア利用について

ベースコート等補強目的ならOKですが、“通気性悪化による感染リスク”にも注意。

不安ある場合は主治医または看護師へ事前相談しましょう。また除光液使用時には低刺激タイプ推奨です。


4. こんな時は必ず医療スタッフへ!

以下の場合は自己判断せず早め相談してください。

  • 強い痛み/腫れ/膿など明らかな炎症
  • 爪下出血、大きな変形
  • 日常生活動作への支障(ペン持ち困難等)

重度の場合には抗菌薬投与、一時的治療休止となることもあります。

「よくある副作用」として我慢せず、小さな変化でも遠慮なく伝えてくださいね。


5. 心身両面から自分らしい毎日へ

指先のおしゃれ=QOL向上にも直結します。

「どうしても気になる」「人目が恥ずかしい」という方には肌色絆創膏活用、おしゃれネイルシール利用など工夫次第で気持ちアップにつながります。

また病院内アピアランス支援窓口では具体的商品情報提供や他患者さん体験談共有機会もありますのでぜひご活用ください。

家族としてサポートする側の場合、「何とか元気になってほしい」と思うあまり無理強いや励まし過ぎになってしまうケースがあります。

「今日はこれしか無理だった」「今はこういうものしか受け付けない」と本人から伝えてもらうことで理解されやすくなるため、自身の状態について率直に話すことも大切です。


【まとめ】

抗がん剤中の爪トラブルは珍しくありません。一人ひとり違う悩みに寄り添った対策法があります。

“我慢せずまず相談”“日々のお手入れ継続”――それだけでも快適度UPにつながります。不安点あればいつでもご質問ください!