乳がんの手術を受けた後、多くの方が戸惑うことのひとつに「下着選び」があります。

手術によって体型や感覚が変化し、これまで使っていたブラジャーでは痛みや違和感を感じることも少なくありません。

そんなときに役立つのが、「乳がん専用下着」や「術後ケアブラ」と呼ばれるアイテムです。

本記事では、乳がん治療後の下着選びについて詳しく解説します。


1. 手術後の体への変化

乳房切除や部分切除を行うと、胸部の形だけでなく皮膚感覚にも変化があります。

  • 傷口周囲が引きつれるような感覚
  • 圧迫されると痛みやしびれを感じる
  • 肩こり・姿勢バランスの変化

こうした状態で従来のワイヤーブラなどを使用すると、傷口への刺激やリンパ浮腫悪化につながる場合があります。そのため、「体に優しく支える」設計の下着へ切り替えることが大切です。


2. 術後すぐに使う下着(回復期)

● 特徴

  • ワイヤーなし・柔らかいコットン素材
  • 前開きタイプ(腕を上げずに着脱可能)
  • 縫い目やタグ位置が工夫されている

手術直後はまだ腫れや痛みが残っているため、締め付けないデザインがおすすめです。医療機関によっては入院時から「リハビリブラ」「回復期ブラ」を紹介してくれる場合もあります。

● 着用時期

退院直後〜1か月程度はこのタイプで十分です。清潔保持と通気性重視で選びましょう。


3. 回復後の日常生活用ブラ

傷口が落ち着いてきたら、「補整機能付きソフトブラ」へ移行できます。

● 特徴

  • カップ内側にパッドポケット付き(補整パッド挿入可)
  • ノンワイヤーでも安定感あり
  • 吸湿速乾素材など快適性重視

左右差を自然に整えたい場合には、シリコン製または布製パッドを利用します。軽量タイプなら肩への負担も少なく、見た目にも自然です。


4. 全摘出・再建手術後の場合

● 全摘出の場合

片側のみボリューム調整できる専用ポケット付きブラがおすすめです。市販品でも「乳房パッド対応」と明記されたものがあります。
また、自宅ではノーブラ代わりになるカップ付きインナー(タンクトップ型)も人気です。

● 再建手術後の場合

人工物(インプラント)または自家組織再建どちらでも、「圧迫しすぎない」「縫合部位に当たらない」構造を選ぶ必要があります。特に放射線治療併用例では皮膚刺激防止素材(綿混・シルク混)が安心です。


5. 素材選びとお手入れ

肌トラブル予防には素材選びも重要です。

素材 特徴
綿100% 通気性良好・低刺激
モダール/テンセル 柔らかく吸湿性高い
ナイロン系 軽量だが蒸れ注意

洗濯時はネット使用+中性洗剤で優しく洗いましょう。乾燥機使用は避けてください。


6. 助成制度について

自治体によっては乳房補整具購入費助成制度があります。金額は1〜3万円程度で、市区町村窓口または「がん相談支援センター」で申請方法を確認できます。領収書提出など条件がありますので購入前に確認しましょう。


7. 試着・相談サービス活用

病院内売店や専門ショップでは試着サービスがあります。またオンライン販売でも「返品交換無料」「自宅試着レンタル」制度を導入しているメーカーも増えています。不安な場合は看護師・義肢装具士・医療美容師など専門スタッフへ相談してください。


8. 心へのサポートとして

乳房喪失による外見変化は身体的だけでなく心理的にも影響します。「もう女性らしく見えない」と感じてしまう方もいます。しかし、自分の体型に合った下着を身につけることで姿勢が整い、自信や安心感につながります。それこそ“アピアランスケア”=外見ケアの一環なのです。


【まとめ】

乳がん手術後の下着選びでは、

✅ 締め付けず柔らかい素材
✅ パッドポケット付きデザイン
✅ 自分の体調・治療経過に合わせて段階的に変更

この3点が基本です。そして何より大切なのは、「心地よく過ごせること」。

あなた自身のペースで、自分らしいスタイルを取り戻していきましょう。

それこそが、本当の意味で“からだと思いやり”を両立するケアになります。