がん治療を受ける中で、抗がん剤や放射線の影響により「外見の変化」に悩む方は少なくありません。
髪の毛や眉毛・まつ毛の脱毛、皮膚のくすみや色素沈着、爪の変化など――これらは身体的な副作用であると同時に、心にも大きな影響を与えます。
そんなとき、自分らしさを取り戻すために役立つのが「カバーメイク(cover make)」です。
一般論をもとに、「カバーメイクとは何か」「どんな効果があるのか」「どんな方法で行うのか」をわかりやすく解説します。
1. カバーメイクとは?
カバーメイクとは、病気や治療によって生じた外見上の変化を自然に整えるためのメイク技術です。
単なる美容目的ではなく、「自分らしく生活するため」「社会とのつながりを保つため」の医療的ケアとして位置づけられています。
専門家監修情報でも、「外見が変わっても安心して自分らしく過ごせるよう支えるケア」として紹介されており、その一環としてウィッグ・スキンケア・ネイルケアなども含まれます。
つまりカバーメイクは、“隠す”ことよりも“整えて前向きに生きる力を取り戻す”ことを目的としたメイクなのです。
2. なぜカバーメイクが必要なのか
抗がん剤治療中には、
- 顔色が悪く見える
- 眉毛・まつ毛が抜けて表情が乏しく感じる
- 肌荒れや乾燥でファンデーションが浮く
など、多くの人が「鏡を見るたびにつらい」と感じます。
こうした外見変化は一時的なものですが、人との関わり方や自己イメージに影響します。
そのため、「健康そうに見える」「いつもの自分らしい表情になる」ことで気持ちを前向きに保ち、治療への意欲にも良い影響を与えることが知られています。
3. カバーメイクでできること
● ベースメイク
肌トラブル(乾燥・赤み・色素沈着)には低刺激性コスメで対応します。
- 下地:ピンク系またはベージュ系で血色感アップ。
- ファンデーション:リキッドまたはクリームタイプで薄づき仕上げ。
- コンシーラー:目元や口周りなど部分補正用。
厚塗りよりも「光で自然に整える」意識がおすすめです。
● チーク
頬骨上部へ軽く入れるだけでも印象が明るくなります。男性でもオレンジ系チーク少量使用で健康的印象になります。
● アイブロウ(眉)
眉毛脱落時にはアイブロウペンシル+パウダー併用がおすすめ。
テンプレート使用で左右差防止できます。
フレーム付き眼鏡との組み合わせも有効です。
● アイライン&アイシャドウ
まつ毛脱落時でも上まぶた際へ細いラインを引くだけで目力アップ。
ブラウン系シャドウなら柔らかな印象になります。
● リップ
唇乾燥対策として無香料リップクリーム+ナチュラルカラーグロス。
強い発色より潤い重視。「ほんのり血色」がポイントです。
4. 使用する化粧品選び
治療中は皮膚バリア機能低下状態なので、
- 無香料・アルコールフリー・敏感肌対応製品
- 石けんオフ可能タイプ(クレンジング負担軽減)
これら条件の商品がおすすめです。また、ブラシ類は週1回洗浄し清潔保持しましょう。他人との共用は禁止です(感染予防)。
5. 専門家によるサポート体制
全国各地には「アピアランス支援センター」や「医療美容講座」があり、看護師・美容師・臨床心理士など多職種スタッフから直接指導を受けられます。内容例:
- 抗がん剤治療中でもできる簡単メイク実習
- ウィッグ試着会/眉描き練習会
- ネイルケア相談
オンライン講座(ZOOM)形式も増えており、自宅から参加可能です。
6. 心への効果
カバーメイクには心理的な回復効果があります。鏡を見る時間が“苦痛”から“励み”へ変わり、「今日も頑張ろう」という気持ちにつながります。また、人前へ出たり写真撮影したりする勇気にもなります。これは単なる外見改善ではなく、“生き方そのもの”へのサポートと言えます。
7. 注意点 ― 無理せず続けること
体調不良の日まで無理してメイクする必要はありません。「今日はリップだけ」「眉だけ描こう」など、小さな工夫から始めれば十分です。“完璧さ”より“心地よさ”。それこそ安全かつ継続できるセルフケアになります。
【まとめ】
カバーメイクとは、
「病気によって変化した外見を整え、自分らしさと笑顔を取り戻すための医療的メイク」です。
その本質は、美しく装うことではなく、“あなた自身として生き続ける力”を支えること。肌への優しさと心への思いやり、
この2つを大切にしながら、自分だけのスタイルで毎日を穏やかに過ごしていきましょう。それこそが、本当の意味で「美しく生きる」ということなのです。
















