抗がん剤治療を受けるとき、多くの方が最初に不安に思う副作用のひとつが「脱毛」です。

髪だけでなく、眉毛やまつげ、体毛も抜けてしまう可能性があります。「いつから抜け始めるの?」「どんなふうに進むの?」「どう心構えすればいい?」

――そんな疑問や不安を抱えている方へ、現場でよく聞かれる声をもとに、「抗がん剤による脱毛」のタイミングや事前準備、そして心の持ち方について詳しくご紹介します。


1. 抗がん剤治療による脱毛とは?

抗がん剤(細胞障害性抗がん薬)は、分裂・増殖スピードの速い細胞をターゲットとして攻撃します。

これは「がん細胞」を叩くためですが、一方で健康な細胞でも分裂サイクルが早い「毛根」もダメージを受けてしまいます。

その結果として、頭髪だけでなく全身の体毛(眉・まつげ・鼻毛・腕や脚など)まで抜けてしまうことがあります。

ただし、すべての抗がん剤で必ず脱毛するわけではありません。

薬剤によってはほとんど影響しないものもありますので、ご自身のお薬について主治医や看護師へ事前確認しておきましょう。


2. 髪はいつ頃から抜け始める?

  • 多くの場合、抗がん剤治療開始から2~3週間後 に髪の毛が抜け始めます。
  • 抜け方には個人差があります。一気にまとまって抜け落ちる場合もあれば、「薄くなる程度」で済む場合もあります。
  • 眉毛・まつげ・鼻毛・体毛なども徐々に減っていきます。ただし全員必ず脱毛するわけではなく、「ほとんど変化なし」というケースもあります。

また、多くの場合1クール目(最初)の投与後2週間くらいからシャンプー時や枕元に大量に髪の束を見るようになり、その後数日~1週間ほどでかなり目立つ状態になることがあります。

この段階になると「そろそろウィッグや帽子を用意したほうがいいかな」と考える方も多いです。


3. 脱毛への心構えと準備

【A】情報収集&相談

まずは担当医や薬剤師に「自分の場合どれくらい脱毛する可能性か」「どんなタイミングか」など具体的に質問しましょう。

不安な気持ちそのものを伝えることも大切です。

また病院内にはアピアランスケア外来や相談支援センターなど専門スタッフがおり、ウィッグ選びやメイク方法など実践的なアドバイスを受けられます。

【B】ウィッグ・帽子等カバーアイテム検討

ウィッグ(医療用かつら)や帽子で外見をカバーできます。最近ではデザイン性・通気性にも優れた商品や助成金制度(自治体独自)も増えているので、自分らしいスタイル選びを楽しむ方も多いです。

また、「バンダナ」「ターバン」「太フレーム眼鏡」など手軽な工夫でも十分カバーできます。

購入前には試着会参加やレンタル利用という選択肢もあります。

【C】髪型写真&イメージづくり

今の自分らしいヘアスタイル写真を撮っておいたり、お気に入りだった髪型画像を保存しておくことで、ウィッグ選びや眉メイク時にも役立ちます。

「こんな風になりたい」という前向きなイメージ作りにも繋がります。また、ご家族とも共有しておけばサポートもしやすくなるでしょう。

【D】洗髪・ヘアケア方法見直し

脱毛初期は頭皮への刺激を避けて優しく洗うよう心掛けましょう。

シャンプー以外にも洗顔料やボディソープで代用できる場合があります。

また枕カバーについた髪対策として室内帽子利用がおすすめです。頭皮保湿クリーム等もうまく活用してください。

【E】心理的サポート活用

「思ったよりショックだった」「人目が気になる」と感じた時には遠慮せず病院内相談窓口(看護師・心理士等)へ話してください。

同じ経験者との交流会(ピアサポート)参加で安心感につながったという声も多いです。

「誰にも言えない」と抱え込まず、小さな悩みでも打ち明けてくださいね。


4. 治療終了後はどうなる?

  • 治療終了後、多くの場合2~3ヶ月ほどで新しい髪が生え始めます
  • 最初は産毛状ですが、その後徐々に元通りになります。
  • 完全回復まで半年~1年程度かかることもしばしばですが、多くの場合一時的な副作用ですのでご安心ください。
  • 稀ですが色味/質感/クセ等以前とは異なる場合があります。それでも時間経過とともになじむケースがほとんどです。

5. 家族・周囲とのコミュニケーション

家族としてサポートする側の場合、「何とか元気になってほしい」と思うあまり無理強いや励まし過ぎになってしまうケースがあります。

「今日はこれしか無理だった」「今はこういうものしか受け付けない」と本人から伝えてもらうことで理解されやすくなるため、自身の状態について率直に話すことも大切です。

また、お子さんの場合には年齢相応に説明した上で一緒にウィッグ選びなど“楽しいイベント”として取り組む工夫がおすすめです。


【まとめ】

脱毛は身体的だけでなく精神的にも大きなインパクトとなります。

しかし、「事前準備」と「情報共有」で不安はぐっと和らぎます。

そして何より、“あなた自身”そのものには変わりありません。

困った時、不安になった時には必ず医療スタッフへ相談してください。

一人ひとり違う悩みに寄り添ったサポートがあります。

「また生えてくる日」を信じて、一歩ずつ進みましょう。

“自分らしく”毎日過ごせるよう応援しています!