### 抗がん剤治療中の爪トラブル~肉芽形成を防ぐ適切なケア
抗がん剤治療を受けると、思いもよらない場所でトラブルが起きることがあります。
その一つが爪の周りに現れる赤くブヨブヨとした組織(肉芽)です。
これは「爪囲炎(そういえん)」と呼ばれる症状で、痛みを伴うだけでなく、放っておくと感染症のリスクも高まります。
私は長年理容福祉に携わってきた経験から、治療中のあなたやご家族が自宅で実践できるケア方法と、「これは病院に行った方がいいな」というタイミングについてお話しします。
少し不安かもしれませんが、正しい知識があれば、多くのトラブルは予防したり、軽減したりできますよ。
### なぜ抗がん剤で爪にトラブルが起きるの?
抗がん剤はがん細胞の増殖を抑える薬ですが、同時に爪を作る細胞など、体の中で活発に育つ健康な細胞にも影響を与えます。
爪が弱くなり、変形したり、割れたりして、皮膚との境目が裂けやすくなるんです。
この小さな傷から細菌が入り込むと、からだは「修復しなくちゃ!」と反応して炎症を起こします。
その結果、肉芽という赤いブヨブヨした組織ができてしまいます。
指先は毎日あらゆるものに触れるので、知らないうちに傷ついたり細菌がついたりしやすい場所なんですね。
特に「タキサン系」と呼ばれる抗がん剤(パクリタキセルやドセタキセルなど)は、爪のトラブルが起きやすいことが知られています。
もしこれらの薬を使用する予定であれば、事前に対策を始めておくといいでしょう。
### みんなが実践できる!家庭での爪ケア5つのポイント
爪のトラブルを予防するには、清潔さと優しいケアが鍵です。次の5つのポイントを日常に取り入れてみてください:
1. **丁寧な手洗いを習慣に**
石けんをよく泡立てて、指の間や爪の周りまでしっかり洗いましょう。洗った後はしっかり乾かすことも大切です。
2. **爪は「浅め・丸く」カット**
深爪は厳禁!爪の先端が指の先から1〜2mm程度出ている長さが理想的です。
また、角は残さず、丸くなだらかに整えましょう。角があると引っかかって傷の原因になります。
3. **入浴後の優しい甘皮ケア**
お風呂上がりは皮膚が柔らかくなっているので、タオルで優しく甘皮(爪の根元の皮)を押し戻すようにケアしましょう。
爪切りなどの硬いもので無理に剥がしたりしないでくださいね。
4. **刺激の少ない消毒液を選ぶ**
消毒するなら、アルコールよりもベンザルコニウム塩化物(商品名:ザルコニンなど)のような刺激の少ないものがおすすめです。
5. **家事は手袋をして保護**
水仕事や掃除をするときは手袋をすることで、化学物質による刺激や細菌感染から爪を守れます。使い捨ての手袋を何組か用意しておくと便利ですよ。
また、爪の保湿も大切です。ハンドクリームを塗る際は、爪や指先までしっかり塗りましょう。
爪用の保湿オイルを使うのも効果的です。就寝前のケアは特に効果的なので、ぜひ習慣にしてみてくださいね。
### こんな症状が出たら病院へ行きましょう
自己ケアも大切ですが、次のような症状が現れたら、我慢せずに早めに医療機関に相談してください:
• 指先に「ズキズキ」とした強い痛みがある
• 爪の周りが赤く腫れて熱を持っている
• 指を押すと膿(うみ)が出てくる
• 肉芽が大きくなってきた、または増えてきた
• 38℃以上の熱がある
• 手や指が動かしにくい、しびれがある
抗がん剤治療中は免疫力が低下していることが多いため、通常なら軽い感染症でも重症化しやすいんです。
「様子を見よう」「大したことないかも」と思わず、何か気になることがあれば、担当医や看護師さんに遠慮なく相談してください。
病院では、状態によって抗生物質の処方や、場合によっては肉芽の切除などの処置が行われます。
早めに対処すれば、痛みも早く取れて、治療も順調に進められますよ。
抗がん剤治療は大変なことも多いですが、こうした小さなケアの積み重ねで、少しでも快適に過ごせるようにしたいですね。
あなたの治療が順調に進むことを心から願っています。
何か困ったことがあれば、医療スタッフはいつでもあなたの味方です。一緒に乗り越えていきましょう。